曽我物語は、曽我十郎と五郎という兄弟が父の仇討ちを、頼朝の主催する富士山麓での狩りの場にてようやく成就するという有名な物語です。
右隻には、有名な頼朝が催した大規模な富士の巻狩を、たくさんの弓を構えた武士と勢子たち、猟犬と鷹狩の鷹、そして鹿、猪、兎、雉などの獲物とともに描かれています。この狩猟の混乱に乗じて曽我兄弟は、父の敵である伊東祐経を狩場で討とうとしますが、絶好のチャンスがおとずれたと思ったその瞬間に木に躓いた馬から十郎が落馬して失敗に終わってしまいます。
左隻は物語の舞台を宿営地に移し、兄十郎が水色の群千鳥の模様の直垂と袴を、弟五郎は薄茶色の地に蝶を散らした直垂と袴を着て登場。兄弟の敵討ちを画面の中央に、その周辺に敵討ちの前後のエピソードを表す多くの情景が描かれています。
この屏風は永年研究者が捜し求めていた土佐光吉が描いたとされる名品と確認されました。室町時代から宮廷絵師として活躍したみやびな画風を特徴とする土佐派研究の貴重な資料です。