幕末期の鳥取藩絵師・根本幽峨(1824~1866)の藩絵師になる前の作品。26歳前後の若い頃の作品で、鳥取藩の御用で描いたものと考えられます。
画題は『平家物語』の源平合戦で語り継がれている「宇治川の先陣争い」と「屋島の合戦」。左隻「屋島の合戦」は源氏軍の大将源義経が平家軍を都から屋島まで追いつめ戦ったときの逸話を描いたものです。義経は誤って自分の弓を海に落としましたが、これを平家に拾われ「源氏の大将はこんな弱い弓が使えないのか」と笑われると、部下たちの士気に影響することを恐れ、敵中で危険を冒して弓を拾うのを弁慶たちが援護している様子です。右隻「宇治川の先陣争い」は源氏の総大将源頼朝が武将佐々木高綱と梶川景季にそれぞれ名馬、生唼(いけづき)、磨墨(するすみ)を与え、京都宇治川で、先陣を争わせた様子を描いています。
どちらも大胆な構図で細かな部分まで丁寧にかつ躍動的に描かれた作品。最高級品の岩絵具が使用され、150年も経ったものとは思えない華麗優美さをみせています。