細長い形に図柄を巧みに配置した柱絵の版木です。表には柳の下で鞠を持つ女性が、裏には地蔵菩薩が彫られています。表右下(右画像は摺上図のため左下)には「哥麿筆」とあり、女性の着物や筆致などから喜多川歌麿〔1753?~1806〕晩年の享和年間〔1801~04〕頃に制作されたと推定されています。 版木は当時単なる浮世絵の制作道具とみられていたため、印刷面が磨耗すると、表面を削って別の浮世絵の原版にしたり、薪に使われたりしました。そのため、版木自体はほとんど現存していません。この版木は裏に地蔵菩薩が彫られていたために壁にかけて拝まれ、現在まで残ったものと考えられます。 なお、歌麿の版木は他に風の博物館・歌麿館(愛媛県肱川町)、ボストン美術館(アメリカ)で1例ずつ確認されています(2002年6月現在)。