「わが館のお宝展」は当渡辺美術館が所蔵する資料のうち、資料保存の観点から長期間展示できないものを期間限定で展示するものです。
このたびの展示では、古の戦を描いた合戦図を中心に展示します。
●見所1:関ケ原合戦図屏風/六曲一双/紙本著色/江戸時代
関ケ原合戦では石田三成率いる西軍の大敗に終わりましたが、その負け戦の最終局面で、島津義弘率いる島津軍は戦場に孤立した状態にありました。そこで決断したのが正面突破。多くの犠牲を強いられながらも並み居る敵を蹴散らし、見事に生還を果たしたのです。
関ケ原合戦図屏風は津軽本・井伊家本などが知られていますが、本屏風はそれらとは異なり、この島津軍の敵中突破が描かれた珍しい構図となっています。
※NHK「国宝へようこそ姫路城」(2020.11)で使用されました
●見所2:平家物語 宇治川先陣・弓流図屏風/根本幽峨/六曲一双/紙本著色/江戸時代
画題となっているのは「平家物語」の源平合戦の1シーン。「宇治川の先陣争い」を描いた右隻「宇治川先陣図」は、源頼朝が佐々木高綱と梶川景季に名馬を与え、京都・宇治川で、先陣を争わせた様子。左隻の「弓流図」は、源義経が平家軍を都から高松の屋島まで追いつめた「屋島の戦い」で、義経が落とした弓矢を自ら懸命に拾おうとする様子が描かれています。平家物語には、義経が「こんな弱い弓が源氏の大将のものだと笑われては末代の恥」と語ったとされています。
作者の根本幽峨は鳥取藩絵師を代表する1人であり、本屏風は最高級の岩絵具が使用された優美なもの。同氏の代表作です。
※平成30年に鳥取県指定保護文化財に指定
●見所3:那須与一図/豊秋/紙本著色/江戸時代
「平家物語」の「屋島の戦い」にはもう1つ、「扇の的」という有名なエピソードがあります。海上の平家軍から船上の扇を射るようにけしかけられた源義経は、那須与一に命じ、初射で扇を射落とすことに成功したのです。与一のこの快挙に両軍から歓声が上がったといいます。
作者の豊秋について詳細は不明ですが、揺れ動く船上の的を狙う与一の緊張感と押し寄せる波に立ち向かう乗馬の力強さが鮮やかに描かれ、当時の緊迫感がうかがえる作品となっています。
※NHK「偉人にチャレンジ」(2021.3)で使用されました
●見所4:貴重な資料を展示
世界に数点しか残っていない喜多川歌麿の浮世絵版木をはじめ、世界各地の万博をはじめ国内外で作品が好評を博した鳥取出身の西村荘一郎の木象嵌「松に猿嵌木丸額」(鳥取県指定保護文化財)、島根出身の蒔絵師・大谷歓到が8年の歳月をかけて製作した「扇流蒔絵飾重箱」など、貴重な資料も展示します。