龍は紀元前に中国で発祥した神獣・霊獣であり、日本でも古くは日本神話などにも登場しています。龍が日本で広まるきっかけとなったのは仏教伝来。仏教が発祥地インドから中国に伝わる際に、仏教の守り神の1人であるナーガ(蛇神)が龍に置き換わったとされています。寺院の天井や欄間などに壮大な龍の装飾が見られるのはそのためです。
そもそも龍は様々な動物を組み合わせた想像上のもので、中国では古来、雨をもたらす神でした。日本でも古来、蛇を水神とあがめる信仰があり、それが仏教の広がりとともに、龍と同一視されるようになったようです。
後に中国では龍が皇帝のシンボルとなり、権力や強さの象徴にもなります。日本でも、虎と並んで強さの象徴として武家などに重用されました。こうして龍は、吉祥をもたらす神、守り神などとして広くあがめられるようになり、多種多様なものにその形を刻むことになります。
2024(令和6)年は辰年。本展では中近世から近現代にかけて、人々が龍に願いを託した縁起物――絵画・工芸・武具・仏具の数々を数十点展示します。